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ただ訳すだけでは届かない—グローバル市場で成果を出すには(前編)

翻訳された言葉が正確でも文化や価値観に合っていなければ、真に“伝わる”とは言えません。
ビジネスの成果を左右するのは、現地の視点に立ったメッセージ設計—つまり「ローカリゼーション」です。この記事では世界の多様な市場で信頼を得て顧客と繋がるための考え方や実践ポイントをご紹介します。

翻訳とローカリゼーションの違いとは?

翻訳は、ある言語の内容を別の言語に変換するプロセスです。一方、ローカリゼーションは、現地の文化や価値観に合わせて最適化します。単に言葉を置き換えるだけでなく、「その国の人に自然に・的確に伝わるか」を重視します。グローバル市場で成果を上げるためにはどちらも欠かせない要素です。

料理のレシピを例に翻訳とローカリゼーションの違いを説明します。



翻訳は、ある国のレシピを別の言語に「書き換える」ことです。例えば、日本のレシピを英語に訳せば英語圏の人も作り方は理解できます。

一方で、ローカリゼーションは、そのレシピを「現地の食材や味覚に合わせてアレンジする」ことです。例えば、日本の味噌汁のレシピを海外向けに紹介する時、現地では手に入りにくい食材を代替したり、現地で好まれる味になるよう味噌の量を調整したりすることが必要になります。

つまり、翻訳は言葉を伝えるプロセスで、ローカリゼーションは体験を届けるプロセスなのです。

翻訳 vs ローカリゼーション



グローバル展開を成功させるには、「翻訳」と「ローカリゼーション」の違いを正しく理解することが必要不可欠です。両者の役割と目的を明確に把握することで、より効果的・戦略的な判断ができます。

●翻訳
定義:意味を保ったまま言語を変換
焦点:文法、言語の正確さ
対象:テキスト中心
目的:理解してもらう

●ローカリゼーション
定義:言語 + 文化に適応
焦点:文化的共感、表現の自然さ
対象:テキスト、画像、色、UIなど
目的:心に届く、行動を促す

ローカリゼーションの重要性

メッセージの伝わり方を大きく左右するのが、「文化的な文脈」です。ある国では心に響く表現やビジュアルであっても、別の国では期待通りの効果を発揮しなかったり、誤解や拒否反応を引き起こすことがあります。

例えば「ユーモア」という感覚はその代表例です。アメリカで大ウケするジョークが、日本の視聴者には伝わらないどころか混乱や誤解を招くこともあります。こうした繊細な違いに配慮し現地の文化や価値観に合わせて表現を調整するのが「ローカリゼーション」です。翻訳が言語を変換する作業であるのに対し、ローカリゼーションは文化・習慣・価値観に即した表現へと調整を加えるプロセスです。

マーケティング施策やアプリ、メール、Webサイトなど、どんなチャネルであっても、相手の文化に馴染むように設計することで、はじめて自然に伝わり信頼性のあるコミュニケーションが可能になります。



CSA Researchの調査によれば、消費者の75%が「母国語で情報が提供されているWebサイトから購入する可能性が高い」と回答しています。これは、言語の壁だけでなく、文化的な繋がりや信頼が購買行動に大きな影響を及ぼしていることが分かります。
どれほど丁寧に翻訳されたコンテンツであっても、文化的な背景が欠けていれば真の意味で「伝える」ことは難しいのです。受け手にとって不自然に映ることがあり、結果としてビジネスの成果にも悪影響を与えかねません。国際展開においては、ローカリゼーションの視点が必要不可欠です。

ローカリゼーションの重要性は、業種や業界によって必要とされる対象や内容が異なります。それぞれの分野で、どのような情報やコンテンツがローカリゼーションの対象となるのか、代表的な例を以下にご紹介します。

IT/通信:コンテンツ、UI文言、エラーメッセージ、FAQ、ランディングページ
●製造:技術資料、製品カタログ、Webサイト、営業資料
●小売:広告、SNS投稿、オンラインショップ文言、店舗POP、パッケージ表記
●サービス:ホテルやレストランの予約サイト、観光案内、オンラインの接客チャット、キャンペーンメール

業界ごとに求められるローカリゼーションの対象は異なります。グローバル市場で成果を上げるために、自社のコンテンツに最適なローカリゼーション戦略を検討してみませんか。