- カルナータカ州における日本企業の現状と今後
カルナータカ州の州都バンガロールと言えば、インドのシリコンバレーと呼ばれ、IT企業の集積地として、日本でも知られていることでしょう。今回は、バンガロールの立地条件、カルナータカ州における日本企業の現状と、今後の動向についての概要をお話しします。
カルナータカ州に進出した日系企業は2020年時点で519拠点です。(インド全体では4948拠点:出典「インド進出日系企業リスト」2020年10月在インド日本国大使館、ジェトロ)。同州最大の都市バンガロールではその郊外に多くの工業団地が点在し、IT企業だけでなく多数の自動車(二輪、四輪)、産業機器を中心とした製造業を積極的に展開しています。その背景には広大な土地と安価な労働力があります。さらに最近の動向としてはイノベーション事業の開発、デジタル分野の研究開発も盛んになってきています。- 立地条件
なぜ、日本企業はバンガロールに進出するのか、その理由を見てみます。
デカン高原に位置し、標高は約1000m。先ず「インドは暑い」という概念に当てはまらない穏やかな気候があります。気温は年間を通して17~35℃くらい。またカルナータカの人々は気候同様穏やかで親しみやすいのが特徴です。これも外国人が一番住みやすい都市にバンガロールが挙げられる理由でしょう。
日本との往復に関しては、2020年から日本航空がバンガロールと東京間に直行便を運航開始。マンガロールとチェンナイに港を控え、この港とは鉄道で直結されています。また国内最大の再生エネルギー設備(18.8GW)を備え、カルナータカ州は電力余剰州となっています。チェンナイなどの主要都市を結ぶ高速道路の建設も進められています。- 技術者と開発力
バンガロールはもともと国防関係施設、軍事物資製造の集積地でした。現在もインド空軍使用のヘリコプターなどの航空機製造、宇宙開発、人工衛星製造がおこなわれていることは意外と知られていないのではないでしょうか。現在はこれに電子機器、建築・土木機械、工作機械、通信機器製造も盛んにおこなわれるようになりました。
さらに、400社以上の多国籍企業の研究開発センターがバンガロールに設置され、インド国内で行われている研究開発収入の約40%がバンガロールで生み出されています。
人材育成の点からは、国内最高峰のIISc(Indian Institute of Science)をはじめとする大学が44校、エンジニアリング単科大学201校、医療単科大学/機関114校があり、優秀な人材を輩出しています。これに加えて近年では日本語教育も盛んになり、インド進出を図る日本企業にとって心強い支えとなっています。- 日本企業のスタートアップ
ここ数年、インドにおけるスタートアップの勢いは、コロナ禍にも関わらず増え続けてきました。日本とインドの間の資金提携のためのファンドも設立されたほか、カルナータカ州政府も経済対策のためにインセンティブを強化し、税金の免除、工場内研修のための奨学金、各種補助金の支給など、積極的な政策を展開しています。
さらにインキュベーションセンターとして、カルナータカ州により設置されたBBC(Bangalore Bio innovation Centre)をはじめとして、ライフサイエンス分野、バイオ・製薬分野、農業分野、ソフトウェア分野など各分野のインキュベーション施設が設置されています。
こうした政策を背景に、インド進出を図る日本企業もずいぶん増えてきました。かつてインドの日本企業と言えば、自動車工場とそれを支える関連企業が大半を占めていました。しかし、最近はこの構図に大きな変化が現れてきました。
製造業、IT関連企業に加え、農業の業務改善と効率化を目指す企業、日本食レストラン、美容などのサービス業、小売業等々、多様な企業がインド進出を目指し、実現を果たしています。
この傾向はこれからもますます強まることでしょう。日本で働きたいというインド人が増える一方、インドの地でビジネスと夢を実現したいという日本人も増えているのです。
日本とインドが様々な差異を越え、互いを理解し、協力して共に前進する時代が始まりつつあります。