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安い、おいしい庶民の食卓―南インド

日本でも南インド料理のレストランが増えてきましたが、南インドの人々が毎日食べている食事はどのようなものでしょうか。インドでも最近は外食産業が盛んになっており、ファーストフードから、ピザ、中華料理、日本料理まで何でもオンラインでオーダーできるようになりました。けれども、やはり古くから伝わる素材、調理法で作られる料理は今も変わらず人々に愛され続けています。今回は南インド各州の特徴ある代表的な食べ物を紹介します。

先ずインド料理というとナンとカレーというイメージを持たれるでしょうが、主に小麦粉を主食とする北インドに対して、南インドはコメの文化です。このコメを主役にしたメニューはたくさんあり、また州、地域によって調理法、食べ方も様々です。

南インドのミールス(定食)はバナナの葉の上にライス、ダール(豆のカレー)、野菜カレー、サンバル(野菜のスープ、日本の味噌汁(?))、ラッサムを盛り付け、好みでそれらを混ぜて手で食べるのが最も一般的です。店によって、日によってカレーはいろいろな種類がありますが、最後はカード(ヨーグルト)をライスにかけて混ぜて食べて締めるのが一般的です。口の中がさっぱりし、消化も助けてくれます。

ライスは食べ放題というレストランが多く、山盛りのライスをおかわりする人もいます。南インドの人々のライス好きに納得させられます。
この定食は量も多く、通常昼食として食べられますが、もっと手軽で比較的軽い朝食の定番を紹介します。

イドゥリ

コメと豆に水を加えてペースト状にひいたもの(バタ)を自然発酵させます。それを丸い型に流し入れて蒸します。とてもシンプルで消化も良く、何とでも合いますが、ふつうはサンバルとココナッツチャトニをつけて食べます。最も一般的な南インドの朝食です。一皿に2つ載せて80円前後で食べられます。

ワダ

イドゥリと並んでよく食べられているのがワダ。ウダルダルという豆を水に浸し、柔らかくなったらこれをペースト状にし、形を整えて油で揚げます。見た目はドーナツですが、まったく甘くはなく、イドゥリ同様サンバルとチャトニで食べます。
イドゥリ・ワダと言えばこの両方が一皿に載って出てきます。これで朝食は完璧です。

ドーサ



これも南インドの代表的な食べ物です。南インド全般で食べられていますが、その元祖はタミールナドゥ州とも言われています。イドゥリと同じバタを使いますがこちらは薄くクレープ状に焼きます。その上にジャガイモなどを調理したものを載せれば、マサラドーサの出来上がりです。バタードーサ、チーズドーサ、オニオンドーサなど、いろいろなバリエーションと工夫が楽しめます。家庭では朝食にも提供されますが、油を使うため少々重たい感じがします。ですから外で食べる際には昼食くらいが適当かもしれません。

 

さて、ここまでは南インド全体で一般的な食事を紹介しましたが南インドと一口に言っても州によって違いがあります。特に独特な食文化のあるケララ州の朝食を覗いてみましょう。

ケララ州はインドの地図の左下にあたる比較的小さな州です。アラビア海に面しており魚介類が豊富なのはもちろん、ココナッツ、バナナなどが欠かさず食卓に登場します。そこで主食になるのはやはりコメを主体とした料理です。

イディアッパム



一見日本の素麺にそっくりですが、これはコメの粉に水と塩を加えて練ったものを独特な道具で絞り出し、イドゥリと同じ蒸し器で円形に蒸し上げます。魚や鶏肉、卵、野菜のカレーなどと食べます。イディアッパムにカレーがよくからんでとても美味しいです。

アッパム



こちらもケララでとても人気のある主食です。コメがベースですが、細かく挽いたココナッツも加えます。水を加えたバタを中華鍋のような形のフライパンで焼きます。中心が深くなっていますからその部分はふっくらして、周辺がカリッとした独特の仕上がりが特徴です。これも様々な種類のカレーと一緒に食します。

プトゥ



タミールナドゥ州などでも食べられていますが、こちらもコメが主な材料です。粗挽きしたコメと挽いたココナッツを交互に何層か重ねて、独特な道具を使って蒸します。アッパムに比べて少しきめが粗く、乾いた感じがしますので、手で細かく砕いてたっぷりのカレーと混ぜて食べます。ケララでは朝食にすりつぶしたバナナ、砂糖と混ぜて食べるのも一般的です!

 

ごく一般的な食べ物しか紹介できませんでしたが、この他にも様々な料理が家庭やレストランで楽しめます。インド料理といっても意外とさっぱりしていて、南インド料理は体への負担も少ないです。各地方の地の利を生かした食材と長い歴史の中で培われ伝えられてきた味、そしてそれを愛する人々の飾らぬ素直な声が食べる者に伝わってきます。