- 14億人が熱狂するスポーツ「クリケット」
2028年ロサンゼルス五輪で、128年ぶりにクリケットが追加競技となることが正式決定されました。今回はインドの国民的スポーツであるクリケットについてお話しします。
みなさんクリケットという球技をご存じでしょうか?インドをはじめ南西アジアの国々で人気があります。投げる、打つ、走るスポーツで、日本で人気の野球の原型にもなっていますが、そもそも、なぜインドでクリケットがそんなに人気なのか、その背景とインド人がこのスポーツにいかに熱狂しているかをご紹介します。- イギリス発祥のスポーツ
クリケットは、インドがまだ英国の植民地であった18世紀後半に、英国の支配層の娯楽としてインドに導入されました。その後、地元インドの人々の間にも広がり、今では全国的に、年齢を問わず広く愛されています。インド以外にも英国領であった南アフリカ、オーストラリア他多くの国でも人気があり、これらの国々が参加するクリケットワールドカップは、インドにおける一大イベントとなっています。
発祥国イギリスにおいてクリケットは、「紳士のスポーツ」とされ、一般的に言われる「スポーツマンシップ」は、クリケットから生まれたものとも考えられており、クリケットは「紳士・淑女のスポーツ」とみなされ、インドでも当初は上流階級を中心に愛好されていました。- ルールの簡単な紹介
クリケットは1チーム11人で構成され、攻撃側と守備側に分かれます。野球と違って攻撃側は10人アウトになるか、50オーバー(ボウラーが60球投げるまで)が終了するまで続けられ、その後、もう一方の守備にあたっていたチームが攻撃します。
攻撃では、打者はボールを打ち、走者が相手側のウィケットまで走りきれば1点、往復で2点、ボールが境界線を超えれば4点、ノーバウンドで超えれば6点が得点となり、最終得点で勝敗が決まります。
守備側はボウラー(ピッチャー)、ウィケットキーパー(キャッチャー)、フィールダー(野手)に分かれます。ボウラーは助走してワンバウンドさせて投球し、投球数は6球で1オーバーと決まっています。10オーバー投げたら次のボウラーに交代します。
古典的な試合形式では1試合が最大5日間(!)もかかることがありました。しかし、現在は新しいルールができて、通常3~4時間で終了するようになりました。- インド人はみなクリケットが好き
インドの国技はホッケーなのですが、実際にはクリケットが最も人気のあるスポーツです。インドでは日本の野球、サッカー同様にプロによるクリケットリーグがあり「インディアンプレミアムリーグ(IPL)」と呼ばれています。インド各都市が自前のチームを持ち、地元の熱狂的な応援を得て、熱戦を繰り広げています。また2023年には女性のリーグも結成され、Women's Premier League(略称:WPL)として、こちらも人気を集めています。
週末になれば、正式なクリケット場でなくとも、あちこちの空き地、公園で草野球ならぬ草クリケットに興じる人々を見かけます。クリケットの大きな試合がある日は、町中から車が、人々の姿が消えます。
- クリケットの魅力
インドのクリケットは世界でもトップレベルにあり、スター選手には年俸数億円という選手もたくさんいます。例えば、今最高に人気のあるヴィラット・コハリー選手は年俸25億円、マヘンドラ・シン・ドーニ選手は23億円と言われています。インドの子供たちは、そんなスター選手に憧れて小さいころからクリケットを始めます。専用の競技場や道具がなくとも楽しめ、だれでもクリケットに興じることができるクリケットは、子供たちにもピッタリなのです。
クリケットの競技人口を国別にみると、インドが圧倒的に世界一で、世界のクリケット競技人口の約半数にのぼる1億5,000万人を占めています。クリケット発祥の英国をはるかに超えた数字です!インドがホスト国を務めた2023年開催のワールドカップにおけるインド対オーストラリアの決勝戦のテレビ視聴者数は、5億1,800万人で史上最高を記録しました。
またこのワールドカップは22のチャンネル、9つの言語(英語、ヒンディー語、マラーティー語、グジャラート語、ベンガル語、タミル語、テルグ語、カンナダ語、マラヤーラム語)で放映され、このことからも視聴者数の増大を支えました。- クリケットを見たい
クリケットはあまり知らないけれど、映画で見てみたいという方にお勧めなのが、「Lagaan (ラガーン)」。アカデミー外国語映画賞にノミネートされた2001年のボリウッド映画ですが、クリケットのルールなど知らなくても、楽しめます。
日本でも日本クリケット協会の活動を通じて、クリケットへの関心が高まっているようですが、インドに訪れた際にはスタジアムでその熱気を体験してみませんか?